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トランプ大統領による関税引き上げ

2017年1月、アメリカ大統領にトランプ大統領が就任したのは記憶に新しいと思います。そのトランプ大統領が就任当日に発表したTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱表明は日本に衝撃を与えました。

TPPとはオバマ前アメリカ大統領の頃に環太平洋地域の12の国々(日本、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ)で経済の自由化を目指

し進められてきた経済連携協定のことで、トランプ大統領がアメリカ第一の保護主義的な姿勢を示し一方的に離脱を表明しました。

まだ、本格的にTPPが動く前だったので日本の自動車業界にはこれによる直接的な影響はありませんが、TPPの離脱とは別にトランプ大統領は自動車や自動車部品の輸入に対する新たな関税を考えていることを発表しました。

これについて現在のアメリカでの日本車の製造台数と販売台数から考えてみました。

アメリカ国内での日本車の販売台数

日本の自動車業界にとってアメリカはとても大きなマーケットです。そのため、アメリカでの日本車販売台数が減ってしまうと、日本の自動車業界に大打撃となります。

日本の各自動車メーカーはアメリカ国内に日本車の製造工場を持ち、日本とアメリカの両方で自動車を製造・販売しています。日本自動車工業会の調べによると、アメリカ国内で生産されている日本の自動車メーカーの総台数は約390万台なのに対し、新車販売台数は倍近い660万台にも上ります。ということは、約270万台を日本で製造し、アメリカへと輸出しているということになります。

もしも、アメリカが自動車の輸入に対する関税を引き上げてしまうと、この約270万台に対して掛かる関税が引き上がってしまいます。

自動車に掛かる関税

トランプ大統領が自動車や自動車部品の輸入に対する関税を引き上げようと計画しています。

これまで、アメリカへ車を輸出すると普通車で2.5%の関税が掛かっていました。トランプ大統領はこの2.5%の関税を最大で25%へと引き上げようとしています。

わかりやすく金額を例に出すと、これはそれまで車が200万円で購入できていたものが、250万円になります。約50万円もの値上がりです。

通常車を購入するときは、車両本体価格とは別にナビシステム一式やHIDライトなどのオプション価格が発生します。ほとんどの人は予算に合わせてそのオプションを調整していくのですが、関税が引き上げられてしまうと欲しかったオプションを諦めることが多くなると思います。50万円分ということは、ほとんどオプションは付けられなくなってしまいます。予算を上げたらいいだけの話ではあるのですが、そんな簡単には上げられませんよね。そのため、関税の引き上げは消費者にとっては一大事です。

なぜ関税を引き上げようとしているのか

トランプ大統領は選挙運動中から「アメリカファースト」を掲げていました。アメリカファーストというのは、アメリカ人を第一に考えるということで、「アメリカ人が損をするようなことはあってはならない」ということを言っています。

アメリカは世界各国から自動車や自動車部品、電気機器やプラスチック製品などあらゆるものを輸入しています。この輸入がアメリカ国内のアメリカ人の雇用を妨げているとトランプ大統領は考えています。

関税を引き上げることにより輸入数は少なくなることでしょう。そうするとアメリカ国内での生産が必要になり、アメリカ国内での雇用が増えていきます。

しかし、アメリカ国内での生産が難しいから輸入することになったハズなのに、またアメリカで生産しようとするとはおかしな話ですよね。トランプ大統領は一体なにを考えているのでしょうか。

関税が引き上げられることによる影響

アメリカの言うことには従う方針の日本政府も、トランプ大統領が自動車や自動車部品の輸入に対する関税の引き上げを考えていること対しては、容認できないと反発しています。

基本日本政府はアメリカには反発しませんが、関税が引き上げられると日本の輸出が減ることが考えられ、すなわち税収も減ってしまいます。借金が多い日本は税収が下がることによってさまざまな影響が出てくるので、日本政府は反発しているわけです。

一方、自動車業界にも大きな影響がでると思いましたが、実は意外と影響がないかもしれません。

なぜ影響がないかというと、もともと各自動車メーカーはアメリカ国内に自動車製造の工場を持っています。アメリカ国内での日本車の販売台数が約660万台に対し、その半分の約390万台はアメリカ国内にある工場で生産されています。ということは、これまで輸入していた約300万台をアメリカ国内で生産することができたら、関税が引き上げられても影響は出ないということになります。

そのため、自動車業界よりも日本政府の方がこの関税引き上げには不満を持っています。

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